自分の結婚式の引き出物を決める時、私と主人は意見が合わずけっこうもめました。
年齢も性別もバラバラなのに、出席してくれた人全員に気に入って貰える物など無いと思いました。
予算は同じにして、それぞれ個別にその人に合った引き出物を準備する人もいると聞きましたが、そんなゆとりもありませんでした。
なので、もうカタログギフトでいいんじゃない?と思っていたら、主人がそれだけは嫌だと反対したのです。
確かに、私も、カタログギフトは欲しいなと思う物がなかなか無いし、実物が来たら、思っていたのと全然違うかったという事は何回もあったので、進んでカタログギフトを提案した訳ではありませんでした。
「でも他にいいのが無いし」と言うと、主人はずっと決めていたようで、「フッチェンロイター の2枚セットのお皿が良い」と言うのです。
フッチェンロイターはドイツの陶磁器メーカーでお上品な食器です。主人はそんなお上品な食器には縁遠いタイプの人間なのにビックリしました。
「でもこんなお上品なお皿、誰も使わないよ」と言うと、「お肉をのせたり、食パンをのせたり出来る」と言い出しました。「割れるし持って帰るのも大変だよ」と言うと、「せっかく来てくれた人に納得のいく物を渡したい」と絶対に譲りそうになかったので、結局それに決めました。
普通、引き出物は新郎新婦も思い出の品として自分達の分も注文するようでしたが、私は主人の頑固な態度に腹が立ち、絶対に自分達のは注文しない、とそこは譲りませんでした。
でも、後日、主人が私の両親の前で、「自分もフッチェンロイターのお皿が欲しかったのに…」とぼやくので、私の母親が同情し、こっそり自分達の分のお皿を主人に渡していました。
今でもそのお皿は我が家の食器棚の奥にそっとしまわれています。
ただただ腹が立った思い出しかないお皿でしたが、結婚式の2、3年後に、式に出席してくれた友達の家にお邪魔すると、あのフッチェンロイターのお皿が出て来たのです。
その友達は「このお皿すごく気に入ってて、自分でも増やしたいと思っているの。大事に使っているよ」と言ってくれたのです。
ずっと「この人センスないくせに」とか「引き出物ごときで何をこだわっているのよ」と腹の立つ事ばかりで良い思い出の無いお皿でしたが、さすが名門のお皿だったんだなと思いました。